『エキストラ』 そう 最初は誰でも良かった こもった地下の風を受けて すり抜ける人々を避ける 改札は無機質に閉じる すれ違ったときにわかった 「ずっと探してたのはこの人」 名前すら知らないあなたに 惹かれているわたしに気づく 目の前に落とされた 黒い手帳を 運命なんて思った わけじゃないけれど そっとページをめくる手が 震えたのはときめいたからじゃない 自分に言い聞かせ ペンのあとをなぞり しずかにため息をつく そう 誰でも人の日記を 覗くのはわくわくするでしょ? 同じ好奇心抑えきれず あなたの足跡をたどった 目隠しを外さないままの方が 幸せなこともあると気づく 夏の終わり 鮮やかに打ち上がる花火 砕け散る私の心重ねる 悼むように響く虫の鈴の音に 秋が来ることに気づいた エキストラはヒーローの 顔を見てはいけないの 台本をもらえただけで 満足すればよかったのに そっとページを閉じる手が 震えるのは悲しいからじゃない 自分に言い聞かせ ペンのあとをなぞり しずかに幕を下ろした 鮮やかに打ち上がる花火 砕け散る私の心重ねる 悼むように響く虫の鈴の音に 秋が来ることに気づいた